過去の記事で「簡単な相場を一瞬で見抜く方法」を書いたときに、チャートを「塊」で観る、というお話をしました。今回のお話は、その「塊」をレンジブレイクのときに意識することで、優位性の高いブレイクアウト手法が身につくというものです。5分や15分足レベルのレンジブレイクなら一日に数回はチャンスが訪れますし、通貨ペアにもよりますが、ワントレードで20ピプスは捕れるはずです。
レンジブレイクは岩登りの要領で3点支持を意識する。
安全に岩登りをするための3点支持。これは両手、両足の内、3か所を安全に固定することをいいます。
トレードでいえば、足がかりと手がかり。足がかりとはエントリーする際のサポート(レジスタンス)となる値段。手がかりとは利確目標と、それに達しなかったときの撤退する値段のことです。
特に大事なのは足がかりで、これが脆い場所でエントリーしてしまうと、足場が崩れて、そのトレードが失敗に終わります。しっかり損切りできるためには、この「足場が崩れた」という感覚が大事で、滑落しながらの無計画なナンピンは傷口を広げるだけです。
レンジブレイクのパターン
今回はいくつか、レンジブレイクのパターンをご紹介します。基本は身を任せられる足がかりを見つけ、そこを背にしてトレードすることです。
なお、ロング場面での図解になりますが、ショートでも基本は同じとお考え下さい。
レンジ上・下限ラインは目安であってエントリーポイントではない。
上図はよくある教科書的なレンジブレイクのエントリーポイントです。これは間違ってはいませんが実戦でそのまま使えるかは疑問です。
5分足や15分足のレンジ幅は20ピプス程度になることも多く、上限ブレイクを狙う場合、下限直下の損切り設定は、デイトレでは大き過ぎます。
この場合、スプレッドも考慮すると、利確目標とのリスクリワード(損益比率)が1:1に満たないこともあり、良いトレードとは言えません。
多くの人が勘違いしているのはレンジ上限に引くラインは、あくまでトレードの目安であって、そこで反発するとは限らないということです。
レンジ上限内側に足がかりをつくるケース。
レンジ上限付近に足がかりをつくるケースは、ブレイク直後にエントリーできます。損切りは足がかりの直下で構いません。
このケースの場合、ブレイク後の押しを待つと、レンジ上限から遠く離れてしまうことがあるのでブレイク直後にエントリーします。
5分足チャートなら5分足がレンジ上限をローソク実体で抜けて確定。次の5分足が手前の5分足高値を越えた瞬間にエントリー。5分足が初動でブレイクした場合には、確定を待たずにエントリーすることもあります。
ダブルボトム、ネックライン付近を足がかりAにしての上昇。
下ヒゲAでショート・ブレイク失敗、この下ヒゲを観て、逆張りロングの攻撃開始、レンジ上限に達しましたが、ロング・ブレイクは失敗。
下ヒゲAでのロングがブレイクに失敗しているので、足がかりBで決着が着いたあとは下に抜けやすかったわけです。
赤丸位置より、もう少し上でもエントリーできます。
こちらもネックライン付近で足がかりAをつくってから抜けていきました。平行レンジでなくとも考え方は同じです。
こちらは、流れには逆行したショート・ブレイクです。足がかりAで一旦はブレイクしましたが流れに逆らっているので再上昇しています。
1時間足以上の足の方向を観て、その流れに逆らわないエントリーを心がけた方がいいという好例です。
レンジ上限外側に足がかりをつくるケース
たまに、レンジ上限外側に足がかりをつくることもあります。相場には値段と時間という2つの調整があり、時間待ちの場合には値段が横に水平移動して、1時間足以上の切り替わるタイミングを待ちます。
エントリーのタイミングは、レンジ上限内側で足がかりをつくるときと同じで構いません。
何度か足がかりAの上限を試してますが上昇していきました。足がかりAの直下に損切りを置けば問題なく勝てたトレードです。
高値と安値に注目するケース
目立つた足がかりがないときのレンジブレイクは注意してください。レンジ上限をブレイクしても深く押してくる可能性があります。
高値Aが特別に意味がない場合、押し安値A(強者の値)付近まで押されます。
このケースは、明らかなレンジ上限ブレイクを確認できるので、そのまま押し目買いをすればいいです。
ポイントAでのブレイクが失敗に終わったあとは、レンジ上限まで届かずに高値切下げとなりました。
その後、レンジ下限をブレイク、その付近に信頼できそうな足がかりもないので、戻り高値Bまで戻されました。
しかし、レンジ下限をブレイクした事実は変わらないので、戻り売りをします。
レンジ上限でサポート反発するケース
これは教科書的なケースですが、レンジ上限だから…ということ以外に、そこでサポートされるべき理由を見つけるようにしてください。
このケースのようにならないこともあるので、その辺の見極めができないと損切り量産メーカーになります。
ポイントAは足がかりになり得ますが、ブレイクポイントとだいぶ離れています。
ブレイク直前に足がかりがないので戻り高値Bまで戻される可能性がありますが、このケースでは、そのままレンジ下限で反発しました。理由は機能している移動平均線(25)とレンジ下限がクロスしたからです。
このように、レンジ下限だからということだけでなく、複数条件を重ねることでエントリーの根拠が強くなります。
このケースも押し安値Bまで押してくる可能性がありましたが、レンジ上限で反発しました。
理由はレンジ内2本の上ヒゲAで、これを見ればレンジ上限で、強い売り圧力がかかったことがわかります。
そこを上抜けたので、逆にサポート根拠となったわけです。要するに単なるレンジ上限ではなかったということです。
レンジブレイク前にエントリー可能なケース
レンジ内部は売り・買いの圧力が拮抗しているので、レンジブレイクしてから、つまりは売り・買いの決着がついてからエントリーするのがセオリーですが、その決着がレンジ内で既についてしまうケースがあります。
この場合、レンジブレイクを待たなくても、エントリーできますが、見方としてはレンジ内での安値切上げや高値切り下げで判断します。
レンジ内はロングしたい人からしたらダブルボトムなど底値パターンの連続、ショートしたい人からしたらダブルトップなどの天井パターンの連続に見えています。
上図のケースを、ショートしたい人が見たら、右側のミニ・ダブルトップがネックラインを割らずに失敗した現象に思えますし、ロングしたい人が見たら、2つのダブルボトム(右側は安値を切り上げている)が完成してブレイクしたように思えます。
安値を切上げた事実は、ロングしたい人にとっては好材料ですが、ショートしたい人にとっては悪材料です。さらに足がかりAをつくって、それでも下に行かなければ、ショート組は戦意を完全に喪失します。
高値を切り下げ、小さなダブルトップ右側で上ヒゲを出しました。ここで、もう上はないと判断できれば、ブレイク手前でショート可能です。
手堅くレンジブレイク抜けの一波を見送るという選択もある。
いろいろなレンジブレイクのパターンを話してきましたが、レンジを抜けていく一波目を見送る選択もあります。臨機応変な判断に迷う方や、ダマシに逢いたくない方は、こちらをおすすめします。
誰の目から見てもレンジブレイクと判断できたあとから、3波目を狙って押し目買いや戻り売りをします。5分足数本あれば、小さな波ができ、切下げ・切上げラインを引くことができるので、そこを抜けてからエントリーすればいいでしょう。
指標発表などでの急落や急騰は手を出せません。急角度過ぎる切上げ・切下げラインは機能しないことがあるので要注意です!
上図なら下がりきって、一度大きくプルバック(戻し)が入ってから戻り売りすればいいです。
5分足陰線と陽線が4,5本あれば波が形成されます。これなら切上げ・切下げラインを引くことができます。
今日のまとめ
ボクがFXを始めた頃は、このレンジブレイクばかりを専門にトレードしてました。ロンドン市場がオープンする夕方4時から5時は、値が動き出すことが多く、「ユーロブレイク」と勝手に名前をつけていました。今でもこの「ユーロブレイク」は大好きで、自分の得意パターンのひとつになっています。
レンジブレイクはダマシも多いので、どういうときにダマシになりやすく、その反対に、どういうときはブレイクしやすいのかを見極めないと、損切り貧乏一直線になるので、しっかり検証してから自分のものとしてください。
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